【読了】スローターハウス5 カート・ヴォネガットJr

2026/07/22オルトさん

SF小説家の大家、カートヴォネガットは有名な
「タイタンの妖女」だけは読んだことがある。

あれ、摩訶不思議な話なんだけど美しい。
めちゃくちゃ面白い。

読後感も異世界。

爆笑問題の太田さんが大好きらしく、
自分の会社の名前も「タイタン」にしてる。

 

昨日は休日明けで大量のやっつけ仕事だった。

なので、オーディオブックで何か読みながら…

と思って、同じくカートヴォネガットの
「スローターハウス5」を読んでみた。
時間にして、約10時間。

 

昔の定番作品だからネタバレありで行きます。

 

スローターハウス。
もうね、名前がメタルバンド(笑)

まさかと思ったが、読了後…

無表情で無機質のブラックメタルを
浴びさせ続けられた気分…

 

安部公房より不条理。しかも事実。
ジョニーは戦場に行った、より救いがない。

 

筆者が実際に体験した、
「ドレスデン爆撃」で主人公がどうなったか

働き、成功し、幸せを得て、
普通に豊かに暮らしていく。

その都度「時間旅行」という形で
あの戦場と現在、未来を行き来する。

なので物語の時系列はぶっ壊れている。

 

主人公が普通の人で、常識的なところが
狂気をかえって強調する。

 

そして、ふと宇宙人に拉致される。

トラルファマドール星の動物園で
有名女優と一緒に飼育され子供まで作る。
本当に、「ふと」そういう展開になる。

 

ところが地球での生活に戻ると、
有名女優や子供の行方を気にかける様子も、
離れたことを嘆く様子もない。

まるで、ふっと主人公の世界から
消えてしまったかのように扱われる。

 

なので、常識的にとらえれば、
時間旅行も宇宙人も主人公の精神が、
ドレスデン爆撃と従軍の体験で崩壊した結果の
一種の精神的な病と考えることも出来るんだけど、

現実とは何か分からなくなってくる。
最後まで説明はない。

 

ユーモアもあるし、読みにくくはない。
淡々と説明される文章だから、
状況は分かる。

 

最後まで読んで分かったけど、
SF小説では、ない。

戦争批判でもない。

 

事故や病気などの運命を大量に描写して、
すべて同列に扱う。

犬の死も、気が抜けたワインの死すらも。

んで、死が表現されるたび

「そういうものだ」

という、語り手の決まり文句が入る。
感情が壊れた人間の自動音声のように響く。

 

作者は全く想いを描いてないし、
主人公に成長も目的もない。
出てくる人は全て普通の人。

 

大量の死を前に、
「プーティーウィット?」
と、鳥がさえずる。

 

理解はできた。

わざと、作者は結論を置いてない。

 

戦争を「悲惨でした」と言うこともなく、
英雄的な話も、戦争から得た教訓も、
噓くさい立派な意見もなく、
病死や事故、犬やワインと同列に扱う。

そして、鳥の意味不明な鳴き声だけが残る。

 

静かな、説明口調の文体で淡々と進む。
冒頭に話した通り、読了後、

誰も聴きたくないブラックメタルを浴びた、
そんな気分になった。

 

事情も全く分からない人々が、
裁断機に放り込まれて、
生きたり死んだりする感じ。

無表情が一番怖い。

 

スローターハウス5

地獄の黙示録でも、
ジョニーは戦場に行ったでも、
フルメタルジャケットでも、
カンガルーノートでも、
辿り着けなかった不条理と無表情。

だから名作なんだろうが、
メタルだったらスローターハウスより、
オジーオズボーン程度のチャーミングさが欲しい、

そう思わざるを得ない、
超高速ツーバスと無表情デスヴォイス。
そんな感じ。

 

とにかく、今もオレの前に倒れて転がってる
ビリープリグリムをなんとかどけてくれw

 

読後感、というより精神汚染。

オレにとってはそんな話であった。

 

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