
短編小説「ドローンエース」
「まだゲームやってるの?
もう…いったい、いつ寝てるのよ」
ドア越しの母の言葉は、
いつもどおりで何も響いてこない。
オレが夢中なのはネットゲーム
「ドローンエース」だ。
リアルすぎるグラフィックと没入感。
オレはこのゲームの中では、それこそエースだ。
スティックを急激に倒し込み、武器を選択。
スホーイをセンターに捕らえトリガーを弾いた。
白黒の画面に切り替わり、
サイドワインダーが命中した。
――よし。
画面端にグリーンの文字で次の指示。
「敵ノ補給基地ヲ叩ケ」
武器をナパームに変更。 急降下しスロットル全開。
12分後に現地に到着だ。 ずいぶん時間がたった気がする。
あれか??
ターゲットをセンターにロックしトリガー。
命中。 画面に赤い警告。
「誤爆。小学校ニナパーム命中」
「あちゃー!やっちまったー。ま、いっか!次!」
結局、この日も徹夜でドローンエースに夢中になっていた。
次の日。昼頃起き出すとテレビがやかましい。
「ひどいことするわねぇ…いつまで戦争が続くのかしら」
母の声にテレビをチラ見。
赤い速報の文字が点滅している。
「…くりかえします。中東で軍用無人機が小学校を誤爆しました」
へぇ…現実も同じじゃん。
いつからだろう。
マイクロウォーと呼ばれる小競り合いが、
世界中でずっと続いてる。
オレもいつかドローンでホンモノを倒してみてぇ。
「ちょっと!ご飯くらい食べなさいよ!」
オレは無言で二階に駆け上がり、
ドアを強く閉めた。
さて、さて、続きだ。
これをやってるときだけが「生きてる」と感じる。
ドローンは勢いよく離陸し、
画面の中の木々の葉っぱを乱暴に揺らした。
画面端に緑色の表示。今回の司令だ。
「重罪ヲ犯シタ戦犯ドローンパイロットヲ排除セヨ」
一般住宅の上空を勢いよく通過。
日本みたいな風景だな…めっちゃリアル。
あれ…どこか見覚えがある。
「パイロットハ意外ナ場所ニ潜ンデイル。注意セヨ」
へいへい。うるせえっつーの。
オレはもう少しで世界一のパイロットなんだよ。
画面の中の赤いマーカーが、ある住宅を指した。
あそこだ!
武器を切り替える。
今度は誤爆するわけにはいかねぇ。
二十ミリ機関砲でも外さないよう急接近する。
お手のもんだ。
素早くカメラを望遠に切り替える。
二階の窓の中に少年がいるのが見えた。
――あいつか――
今もドローンを操縦しているようだ。
その時、窓の外で笛を吹いたような音が聞こえた。
ふと、窓の外に目線を移す。
ずいぶん離れた低空に、
ホバリングする巨大な無人機が浮かんでいた。
オレは反射的にトリガーを押し込んだ。
遠くでガトリング砲が回転するブーンという音が響いた。
~END~
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