
【短編小説】巨大なタマゴ
ある日、突如として都市のど真ん中に現れた巨大な卵。
その異様な存在感に、世界中が騒然となった。
卵は直径数十メートルにも及び、表面は滑らかな金属のような輝きを放っている。
何よりも奇妙だったのは、それがどのようにしてそこに出現したのか、誰にも説明できないという点だった。
地球防衛隊は直ちに現場を封鎖し、卵を取り囲んだ。
科学者や生物学者、宇宙物理学者が次々と呼ばれ、卵の正体について憶測を巡らせた。
ある者は異星人の産物だと主張し、ある者は地球外生命体のカプセルだと言い張った。
その一方で、卵からは全く動きが見られず、ただただ沈黙を保っていた。
数週間が過ぎたある日、突如として卵が割れた。
轟音が都市中に響き渡るその瞬間、周囲にいた者は恐怖と好奇心に揺れ動いた。
卵の中から現れたのは、翼を持つ巨大な鳥型の怪獣だった。
その体は鮮やかな羽毛に覆われており、目には知性が宿っているように見えた。
怪獣は一瞬あたりを見回した後、大きな鳴き声を上げた。
その声は低く響き渡り、地面が揺れるほどだった。
「都市防衛司令発令!」
地球防衛隊は直ちに対応を開始した。凄まじい爆炎が鳥型怪獣に集中し視界を遮った。
「やったか??」
爆炎が消えると傷ひとつ付いていない怪獣が変わらず立っていた。
次の手は熱核兵器を使用するしか人類には残されていない。
そのとき、空に眩い光が現れた。
光が収束すると、その中から現れたのは人間の姿をした巨大な存在——光の巨人だった。
巨大な鳥型の怪獣は光の巨人めがけて突進を始めた。
巨人に衝突すると思われた次の瞬間、怪獣はピィピィと巨人にすり寄り、なんと甘え始めた。
「始めて見た動く物を親と思ってしまう性質は鳥型の怪獣も同じだったのだ!」
生物学者が叫んだ。
よしよししながら光の巨人は無表情だった。
だが困り果てていることはみんなにバレていた。
三日三晩が過ぎた。まだ巨人は困り果てていた。
「あいつどうしたら良いんか分かんないんじゃね?」
SNSで光の巨人は大炎上。
罵倒され続け、偽情報も拡散され続けている。
「俺にいったい何の責任があるというんだ・・・」
だがこんな騒ぎになってしまったら世の中生きていけない。
批判を浴びせられスマホ片手に巨人は更に困り果てていた。
それから更に三日三晩が過ぎ、
怪獣をあやしながら憔悴(しょうすい)しきった巨人はついに心が折れた。
「仕方ねぇ、、俺が飼うしかねえ、、」
巨人は怪獣とともに空高く飛び立ち、都市の上空をぐるりと旋回した。
そして二つの姿は、やがて遠くの空へと消えていった。
その後、無職だった光の巨人は、怪獣を養うため地球防衛隊に就職したらしい。
大量のエサや高額な医療費などを捻出するため、一生仕事を頑張り続けたという。
~fin~